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  • 執筆者の写真Yanagisawa Shizuma

エメラルドゴキブリバチAmpulex compressaの繁殖方法

更新日:2022年7月31日

 先日、飼育を開始した個体から数えてF4の幼虫を得ることができました。

 以前繁殖方法について書いたことがあるのですが、その後微修正や新しい知見なども得ることができたのでここで再度まとめてみたいと思います。

 こちらはエメラルドゴキブリバチAmprex compressaの♀成虫です。まさにエメラルドのような輝きを持ったハチです。


 こちらは♂個体。基本的に♀個体より小さく、腹部は短いため翅の下にほとんど隠れます。


 この美しい見た目だけではなく、ゴキブリを狩り、卵を産み付けて幼虫のエサにするという衝撃的な生態から書籍などでも頻繁に紹介される昆虫です。


 ドイツでは以前より飼育されていたようですが、日本では数えるほどしかなく、飼育の情報も少ないので少し詳しく記したいと思います。


 以下から繁殖セットの作成方法をご紹介します。


①ケースを用意する。

ケースは30~45ほどあれば十分です。かなり動き回るので、あまり小さいケースにしてしまうとゴキブリとの遭遇率が高くなりすぎてしまうのでこのくらいの大きさがちょうどいいかと思います。大きな隙間のないケースを選びます。


②ケースにマット(床材)を敷く。

床材は赤玉、カンナくず、ピートモスなどいろいろ試してみましたが、見た目、管理のしやすさと、次に出てくるビンの埋めやすさから未発酵のクワガタマットが最も使い勝手がいいです。


③ビンを並べる。

巣穴となるビンをマットの上に横倒しで並べます。この時使用するビンは直径が20~35mmほどあるものを使用します。長さは60~80mmほどがよいかと思います。というのも、あまり長すぎるとケースの中で邪魔になるだけなので、上記のような適度なものを使用することをお勧めします。

当方ではラボランのスクリュー管ビンNO.7を使用しています。

また、ハチがゴキブリをビンの中に連れ込む際、ゴキブリが転倒するとうまく産卵を行うことができないようなのでビンの内壁に和紙のようなものを被せるといいかもしれません。ただ、これは結構手間なので私はやっていません。転んでいるのを見かけたらピンセットで直しています。


④ビンにマットを被せる。

設置したビンに床材と同じ未発酵マットを被せて手で軽く固めます。


④エサ、樹皮を入れる

ハチ・ゴキブリ両種のエサとなる高たんぱくゼリーと、ゴキブリの隠れ家となる樹皮を入れます。ゴキブリの隠れ家がないと、ビンの中に入られてしまい、ハチの狩りが順調に進まないため、これはかなり重要です。

 これでセットは完成です。ここにだいたい7~8匹のゴキブリと、♂バチと♀バチ、もしくは交尾済みの♀バチを入れます。交尾については♂と♀を同じケースに1週間も入れておけば勝手に交尾します。羽化してすぐ交尾することもできるようなので、当方では羽化した♂♀個体をこのセットに入れ、1週間ほどしたら♂を取り出して♀を産卵に集中させています。いつまでも♂を入れておくと♀にアピールをしてしまって産卵を妨げてしまうので、♂は交尾後離して飼育するほうが産卵数が上がるように思います。


 だいたい多い時で1日に2回、産卵行動が確認できると思います。


 なぜかハチが興味を示さないゴキブリもいるので、ゴキブリは定期的に入れ替えを行います。


 寄主としては以下のゴキブリへの産卵を確認しています。その後についても産卵~成虫まで問題ありませんでした。


・クロゴキブリ

・ワモンゴキブリ

・コワモンゴキブリ

・トビイロゴキブリ

・ウルシゴキブリ


 卵は中脚の付け根に決まって産卵します。


 卵は数日で孵化し、幼虫となります。最初は外部寄生で、20mmほどになるまで中脚の付け根から動きません。


 その後幼虫はゴキブリの体内に入り込み、内部を食べてさらに大きく育ちます。そしてゴキブリの胸から腹部にかけて細長い繭を作ります。ゴキブリはこの繭を作る少し前まで生きています。


 繭は固く、外から触ることで幼虫か繭かの判断ができます。繭になった後そのままの状態でも羽化してくるのですが、場合によってはウジやダニがわいたり、カビが生えたりするため、当方ではゴキブリを剥き、繭を取り出しています。こちらが取り出した繭です。この状態にしたら、あとは乾いたティッシュの上に転がしておくだけで羽化してきます。羽化率も非常によく、20個に1個羽化しないのがあるかな?くらいです。


 ここからは繁殖の番外編ですが、繭の中身をご紹介します。

繭は薄い繊維状の膜で覆われた2層構造になっています。


 これを剥いていくと、中からどんぐりのような2層目が出てきます。


 幼虫はこのような状態で繭の中に入っています。


 その後蛹になり、だんだんと色づいてきます。



 羽化する際は繭の端をうまく切り、脱出してきます。


寄 り道もしましたが、繁殖に関しては以上になります。成虫の寿命も3か月ほどは生き、エサも昆虫ゼリーで飼育ができることや、1♀が20卵以上産むことから比較的繁殖自体は簡単なように思いますが、ゴキブリの確保や、飛ぶ故の脱走防止など癖のあるところも多いです。また、あまり痛くはありませんが♀個体は刺してきますので注意が必要です。


 本種は非常に素早く飛翔するため、逸走には十分注意が必要です。非常に魅力的な種ですが、飼育する際は油断しないように心がけましょう。

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